少子化対策大作戦
2008-04-14


結婚しているカップルで、夫が家事育児を積極的に手伝う場合は、妻が二番目の子供を生む確率が高い――最近そんな統計をインターネットで読んだ。現代では、家事育児を積極的に手伝う夫は、そうでない夫よりも子供をたくさんもてるということが、統計的に証明されたようである。

それに関連して、家事育児を手伝わない夫たちへの不満を、妻たちがタラタラと述べているサイトも読んでみた。みんな怒りまくっている。いわく、

「結婚する前は、家事を手伝うといったのに、実際は言っても何もしない」とか、
「子供が生まれてから、まったく夫は家事育児を手伝わず、自分だけ一人で遊びに出かけている」とか、
「不満を言うと、誰のおかげで、お前は飯を食っているんだと言われた」とか、まあまあ、様々な不満がぶちまけられている。

そして、多くの人が、その最後に書いている。

「今、離婚を考えています」
「子供が、手がかからなくなったら、離婚します」
「これから、お金を貯めて、離婚の準備をします」

自分が、家事育児を手伝わないくらいで、離婚はないだろうと、そうたかをくくっている世の男性方、その考えは、甘い! 今日日、女たちは、夫が家事育児を手伝わないくらいで、簡単に離婚したくなるのです――しかも、年代を問わず――夫が家事を手伝わないという理由で、50代、60代でも妻から離婚を申し立てる夫婦さえいる。

こういう女たちの怒りはもっともなものの、しかし、男が家事育児をしたがらないのには、生物学的根拠があるのだ。つまり、オスという種の長い進化の歴史の中で、オスの仕事は「種を蒔くこと」だけ、という種が多いのである。オスは、子育てはおろか、餌だって運んでこない動物もたくさんいる。そのため、オス(男)の脳の中には、自分の仕事は、「種蒔きだけ」という観念が根強く残っているようなのである。

あるとき、私はチーターのメスの子育てをビデオで見たことがある。チーターのオスも「種を蒔くだけ」の動物の一つで、子育てはすべてメスがやる。数年間、メスと子供たちという母子家庭で、母親は、狩りをして子供たちに餌をやり、子供を外敵から守り、そして子供に狩りを教えと、24時間孤軍大奮闘。それなのに、ある日突然、子供たちはもう一人前と判断すると、唐突に子供たちと別れるのだ。子供たちのほうは去っていく母親を見送るだけで、決してあとを追いかけようとはしないし、母親も振り返りもしない。そのあまりの未練のなさに、私は感動してしまったのである。

では、人類はといえば、少なくとも餌だけはオス(男=父親=夫)に運んでこさせようということで、数百万年前に、いわゆる結婚制度みたいなものが始まり、男は外で狩り(仕事)、女は家で家事育児という男女の役割分担が確立した。

ところが、その数百万年間続いてきたパターンが、過去数十年間、先進諸国では、女たちが外で働くようになり、お金を稼ぐようになってから、急激に変わってしまったのである。女たちは家事育児以外にも、人生の楽しさを知るようになり、家事育児に費やすエネルギー・時間をできるだけ減らしたいと思うようになっている。

女(というより、正確にいえば、女の脳)は、数百万年も続いてきたライフスタイルを、わずか数十年で簡単に変えることができたのに、男(男の脳)はといえば、それが簡単にできないのである。単純に言ってしまえば、女の脳は器用で、男の脳は不器用なのだ。女の脳はマルチで、家事も育児もできれば、外で仕事もできるし、やろうと思えば、たいていのことを簡単に学び、平均的にこなせてしまう。

一方、男の脳は、一点集中型で、たいていは仕事と趣味とスポーツくらいにしか関心がもてない。家事育児は、多様で煩雑で細かいことの連続で、普通の男の脳にはおそろしく難しい。そして男の脳は、自分が関心のないこと、不得意なことをしようとしたり、させられたりすると、ものすごくストレスがたまって、イライラし、切れやすくなる。

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