「アジャシャンティ」(3)―輪廻転生
2012-04-08


今回は、「輪廻転生」についてである。

実は、「あなたの世界の終わり―『目覚め』とその『あと』のプロセス」本体価格1900円 ISBN978-4-86451-038-7 C0010ナチュラルスピリット発行)の本の中で、輪廻転生はまったくテーマではないし、アジャシャンティもこの輪廻転生について話すことにほとんど関心がない。にもかかわらず、本の最後に収録されているインタヴューで、インタヴュアー(原書出版社の代表兼編集者で、アジャシャンティの長年の友人かつ生徒)が、何とかこの話題を引き出し、それに対して、アジャシャンティも長年の信頼関係のよしみで、ではまあ、仕方なくという感じで、輪廻転生を思い出したときの話を語っている。

いわゆるスピリチュアルと名のつく教えのどこか――それらがどれほど違う種類と内容の教えであっても――に関わっているほとんどの人たちが共通して関心をもっていることが、この輪廻転生とカルマという話題である。なんとなくの印象でいうと、21世紀になってから、スピリチュアル系タレント(っていうのか)の人たちが、テレビ番組で「過去生(前世)」の話を軽く語りだしてから、「過去生(前世)」はかなり日常語になった感があり、スピリチュアルな業界にいたっては、輪廻転生はもはや常識でさえある。

だから、私が「輪廻転生は真実ではない」と言うと、よく驚かれてしまう。私は、ニサルガダッタ・マハラジ、ラメッシ・バルセカール、ダグラス・ハーディングなど、輪廻転生を明確に否定するどちらかといえば少数派の教えの系譜にいる。輪廻転生の否定を、ニサルガダッタ・マハラジほど、シンプルに簡単に説明した人はいないので、まずはその説明を最初に紹介してみたい。

ラメッシ・バルセカールの処女作、「The Pointers From Nisargadatta Maharaj――ニサルガダッタ・マハラジの教え」という本の「There Can’t be Re-birth−−輪廻転生(生まれ変わり)はありえない」で、マハラジは、輪廻転生はありえないと明言し、伝統的ヒンズー教の修行僧をショックに陥れている。

マハラジの説明を要約すれば、

「生まれたもの、対象的に生まれた肉体は、やがては『死に』、そのあと、分解し、完全に崩壊する。生命力は、肉体を離れ、外側の空気と混じる。感覚のある生き物の対象的部分は破壊され、同じ肉体として生まれ変わることは決してない。そして、対象物ではない意識はまったく『物』ではないので、それゆえ、非対象的な何かとしての意識は、『生まれる』ことも、『死ぬ』ことも、『生まれ変わる』こともできない。これらは、疑う余地のない事実ではないだろうか?」

つまり、マハラジの問いは、「そもそも輪廻転生すべき(生まれ変わるべき)何か実体が、ありますか?」という問いである。

では、アジャシャンティの説明はどうかといえば、彼は自分がある時期、過去生をたくさん思い出した時の話をし、「それは、朝目覚めて、『わお!自分が50もの過去生を同時に思い出した夢を見た』というようなものであり、そういった経験は夢の性質をもち、目覚めとは本質的には無関係である。しかし、もし誰かが私に尋ねれば、過去生と多くの人々が呼ぶようなものを自分が経験したことは事実なので、それを否定はできない」と、そう説明をしている。さらに、彼は、過去生とは実は過去ではなく、自分にとっては同時生のようなものであった、と語っている。


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