パリの空の下で
2017-11-25


 先日パリで、ダグラス・ハーディング死去10周年の記念イベントがあり、参加してきた。

日本で言えば、十回忌の法要のような感じで、ダグラス・ハーディングと「頭のないヴィジョン」を愛する人たちが世界中から集まり、彼を偲び、思い出を語り合い、そして実験を楽しんだ。
 
キャサリン(ダグラス・ハーディングのフランス人の奥さん――現在85歳)は、このイベントの少し前に心臓の病気で入院していたそうであるが、当日は看護師の娘さんに付き添われて元気に姿を現した。

「あなたをはじめ、遠い所から来る人たちのために、元気になってどうしても来たいと思ったの」 と彼女に言われて、涙が出た。

キャサリンは 「頭のないヴィジョン」のコミュ二ティの母親のような人で、彼女がいるだけで場がなごやかになり、温かい空気になる、そんな人だ。今回は、私も含めて彼女に会いに来た人は多かったと思う。

二日間の間、キャサリン、リチャード・ラングをはじめイギリス、フランス、オランダなどから来た約10人くらいの人たちがそれぞれ思い思いにダグラス・ハーディングと「頭のないヴィジョン」についてスピーチや実験をおこなった。

キャサリンから「あなたも何かしゃべって」 と頼まれて、私のそのスピーカーの一人になってしまい、簡単なスピーチをし、一人用紙袋の実験をやり、余興に歌を歌った。

一人用紙袋の実験道具は日本オリジナルなもので、これを「頭のないヴィジョン」を愛している外国人にプレゼントすると、とても喜ばれる。

当日は、私の下手な英語のスピーチを長々やるより、短い実験をやるほうがいいだろうと思い、「日本の技術でこの道具を作りました」と冗談を言って、この道具を使ったほんの5分程度の実験を全員でやった。

そして最後に調子にのって英語の歌まで歌ったのは、一日の夕方の時間帯で、みんなが少し疲れている頃なので、何か変わったことをやると疲労が吹き飛ぶのではと思いついたからだ。

それにちょっとキャサリンを驚かせ、喜ばせたいとも思ったからだ。
 
一般的には静かで内向的だと思われている日本人が、突然Let it be とAmazing Grace を「頭がないヴィジョン」ヴァージョンで歌ったので、会場の皆さんはたぶんちょっと驚いたようだが、それでも終わったあと皆さんからとても温かい言葉をいただき、キャサリンもとても喜んでくれた。

たぶん、こんな大勢の外国人の前で英語の歌を歌うなどということは、人生でこれが最初で最後だろうし、ここは「顔のない世界」なので、恥もどこかへふっとんだ――でも夜、ホテルへ戻ったあと、思い出したら少し恥ずかしくなったけど。

さて、パリ――ダグラスのおかげで、何度もこの街を訪れる機会を得た。前回訪れたすぐあとで大きなテロがあり、一時は観光客の減少も伝えられたが、今はまた普通にどこも混んでいる。この寒空なのにパリのカフェでは、店の外で食事をしている人たちも多く、その根性(笑)に驚いた。


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[ハーディング]

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